奈良県・生駒の行政書士事務所「すみれ行政書士法務事務所」の行政書士
宇戸谷と申します。ブログをご覧いただきありがとうございます。

先日、認知症を患う奥さまが失踪し、数カ月経っても発見されない、とい
うニュースを耳にしました。
最初の失踪時からそのニュースは把握しており、1日でも早い発見を願って
おりましたが、その後進展がないとの続報で、どこかで事故にあっていない
か、心配されているご家族のことを思うと胸が痛むばかりです。

日本の高齢者の内認知症患者数の割合は、2025年には5人に1人になるとい
われ、今後も認知症患者による事故や事件が生じることが予想されます。

そういった中、認知症を患う方と共に暮らす社会を築き上げていくうえで重要
なことの1つとして、認知症の方の行為が原因で第三者に被害をもたらしてし
まった場合の補償を整備しておくことが挙げられます。

そのような機運が高まる契機の出来事の1つが、2007年に起きた人身事故
です。
認知症の方が線路に立ち入り、事故が発生したことで、
鉄道会社が遺族に損害賠償請求訴訟が起こす事態となりました。

結果的に遺族側の賠償責任は認められませんでしたが、
この裁判は、認知症患者の家族は賠償責任を負うリスクがあること、
被害者側は損害賠償を受けられないこともあるということ、
つまり補償の整備がされておらず双方に救済措置がないという状況
を浮かび上がらせました。

こういった事故を教訓に、民間保険会社が認知症の方による第三者事故に
対応した賠償責任保険の開発を進め、それを自治体が活用している例がここ
数年で増えています。

その先駆者である神戸市は、市独自の認知症診断助成制度と組み合わせる
ことで、認知症と診断された方による事故を、1事故最高2億円まで補償する
仕組みを成立させています(保険料は無料)。

関西では神戸市以外にも尼崎市や富田林市、精華町など、様々な自治体で
同様の仕組みが整備されている最中です。奈良県内で確認できるのは現状葛
城市のみですが、県内全域、そして全国に広まることを期待しています。

なお、このような自治体独自の個人賠償責任保険は、内容や要件が自治体
毎に異なるものとなっておりますので、詳しくはお住まいの市町村にご確認
ください。